DODECAGONとしか名付けられなかったんだね

「初期のキリンジが好きだった」という人がいるけど。個人的には、ここ数年で一番初期に近いと思う。ピコピコを取り除いたら、メロディのポップさがPDMに一番近いって。『ニュータウン』だとか『汗染み』、『五月病』のような明るさ、素直さ、かわいらしさ、久しぶりにこんなに味わえたって、私は嬉しかったけどな。
『自棄っぱちオプティミスト』なんて。天性のかわいさの上に、さらに意識的なかわいさを上乗せして、もう、どうしたらいいのか。
バラードもね。二人のこんなに素敵なバラードが一曲ずつ入ってるなんて贅沢だなあって。
『鼻紙』、泰行さんの思惑(M-10)を知って、本当に泰行さんらしい、やさしくてあったかい、そっと支えてくれるような、本当にいい曲になったよ、って言いたくなった。『味気ないさ』と挙げてるものがどれも女の子のツボを抑えていて、あぁさすが、と脱帽もしちゃう。
『Love is on line』、いい曲なんだけど、素直に認められない人も多いだろうなとも思うんだ。高樹さん独特の毒がメロディにあまり感じられないからね*1。だけど、それでもね、やっぱりいいとしかいえないよ。ご本人もおっしゃってらしたけど、上品さが今までとは違うというのは間違いないよね。そしてまた泰行さんのボーカル!『馬の骨で特訓したおかげで丁寧に歌えるようになったと思う』と何かのインタビューで言ってたけど*2、その通りだと思う。一つ一つの言葉が胸にささるもん。おまけに息づかいまでも伝わってきそうなんだ。どきどきしてしまう。
もちろん、『柳のように』とか、『アメリカン・クラッカー』とか、『愛しのルーティーン』とか、『CHANT!!!』とか(全部挙げるの?)、どれもとても今のキリンジだと思うし、一本の線でつながってると思うし、どれもこのアルバムに必要だと思う。最初どうだろうと思ってた『今日は』もね。
『Love is on line』の最後のファルセットが『冬来たりなば』のラストを彷彿とさせて、あるいは『アメリカン・クラッカー』の最初が『Soft focus』に似てて、もしくは『愛しのルーティーン』を馬の骨バンドが演奏していても違和感が全くないこと。ソロは必要だったんだ、と思った。いや、ソロ楽しかったし、今でもどっちのアルバムも聴いてるけど、キリンジにとっても必要だったなぁって。
キリンジと、馬の骨と堀込高樹。すごく素敵な物語だと思います。それを見守れることができて、とても幸せです。

*1:一方で歌詞はすばらしいことになってますが!

*2:自宅で録音することが多くて、音質が悪い分、自分が丁寧に歌わないと、とかなんとか。