泰行さんが紡ぐ、大人のためのおとぎ話。

「だれかの詩」を聴いて思ったこと。

大人って辛い。殺伐とした都会で、仕事に追われる毎日をただひたすら繰り返す。
その毎日から、苦しい日常から、少しだけ抜け出せる魔法。今いる場所、目指すべき方角、それすら見失ってしまうそうな自分のための羅針盤。さびしくながい夜を、照らす光。
朝になると魔法はとける。またいつもの朝。その魔法は、まるで夜しか見えない星の光。
それでいいんだ。魔法はいつかとけてしまうこと、大人になった自分は知っている。それでも、何物にも代えがたい魔法。砂漠の北極星のように、きらきらとかがやく魔法。
大人のおとぎ話は、ハッピーエンドとは限らない。
「君がいれば」
君がいれば、確かに、世界は変わる。でも、それは永遠ではないんだと気付いてしまった。つかの間の魔法。魔法は消える、朝は来る。
切ないおとぎ話。大人と現実と。だけど、その中で、唯一の魔法。
だから、毎晩。はなれた影、つないだ指、交わす笑みと、君の名前で。せめて、せめてもの魔法にすがって。
そして朝を迎えるんだろう。明日も。

東京という街が好きなのは、こういうときです。え、どういうとき、って聞き返されると困るんだけど(笑)「ごらん、恐竜みたいな摩天楼の寝顔」。この言葉が似合う街は、世界で一つしかないと思う。
「だれかの詩」はラブソングだと思う。その中でも、大人の悲しいラブソングだと思う。つらい毎日と、君がもたらす光と。その繰り返し。
だけどね、こんなに切ない歌なのに、泰行さんの言葉、苦しいはずの日常が全然透けて見えないんだ。だから、おとぎ話。フェアリーテイル。泰行さんが紡ぐ言葉。
泰行さんのフィルターにかけると、世界はこんな風に見えるのか。のぞいてみれたらいいのに、その世界を。