全力で過去になっていくのを見守っている

堀田あけみさんの小説で一番最初に読んだのは、「想い出させてあげよう」です。

想い出させてあげよう (角川文庫)

想い出させてあげよう (角川文庫)

これは、暗い小説を買おうとしていた私を見てドン引きした母に、「もっとさわやかなの読みなさい!こういうのとか!」とその場で見繕われて読みました。高校3年生の男女のお話。
最後のシーンで、進学ではなく陸上のために就職することを決めた主人公の女の子が、高校の校庭や校舎や生徒を見て、「まだ高校生活は何ヶ月も残っているのに、全力で過去になっていっている」と感じるシーンがあります。
今の私にとってのキリンジは、こういうことなのだと思います。
二人だったキリンジはもう過去になっている。まだ何ヶ月も余命はあるのに。なんだか懐かしいような気がするくらい、過去になってしまっている。